<158> #12

2010-11-18 16:20:11

神奈川県教委の担当者氏と再び話す ― 「自動加入」は「強制加入」とは違う!?

テーマ:PTA
いくつか確認したいことが出てきたのと、前回伺った県教委の主張を文書にしてもらうための手続きを確認するため、昨日、担当のY氏に電話をさせていただいた。


<文書化してもらえることに>
文書にすることに関しては、氏名と住所を明記のうえ、依頼を郵送すればOKとのこと。
ありがたい。
なお、神奈川県教委としては、「PTAの自動加入は消費者契約法にも触れない」とのスタンスをとっているわけだが、今日、その考えに変わりはないか聞いたところ、この点も今回弁護士に確認したが、スタンスは変わらないとのこと。
その判断の文書化も依頼したところ、これも了解してもらえた。
ちなみに、そのポイントを口頭で聞いたが、まったく納得できない(その主張の要点は、①PTAへの入会は「契約」とはいえない。②PTAと保護者個人には「情報の質及び量並びに交渉力の格差」はない)。 こちらも、届き次第、ご紹介したいと思っている。


<当方の要約に対する反論 ― 「『強制加入』は容認していない」>
先日のエントリーでの当方の要約に不適当なところがあれば指摘してほしいと聞いたところ、「神奈川県教委が『強制加入』を容認しているような書き方になっているが、こちらとしては『自動加入』は容認されると言っているが、『強制加入』については言及していない。」とおっしゃる。

しかしながら、昨年度末の時点で、担当者氏は、次のように述べているのだ。

**
PTAの決めごとは、新入生の保護者(PTA未加入者)に対しても、そのPTAの判断により適用しうる。
つまり、そのPTAが自動加入方式を採用し、それを当該学校の全保護者に適用することを決めたのなら、その決定は効力を持つ。
よって、自動加入方式は、人権上問題であるとは言えない。
よって、自動加入方式のPTAを優良PTAとして選出することに問題はない。
**拙記事<「『自動加入』は人権侵害とは言えない」(By神奈川県教委)※追記あり>より

確かに、「強制加入」という言葉こそ使われていないものの、要するに、PTAで決めてしまいさえすれば、保護者の意思を問うことなく、つまり、有無を言わせず会員にすることができると言っているわけだから、実質的には「強制加入」を容認していると言われても仕方あるまい。

上に引用した発言の中で、<あるPTAが自動加入と決めたのなら、その決定は非会員に対しても効力を持ち、全保護者に適用できる>ということを言っている点に注目してほしい。

これを新入生の保護者の立場から言うならば、自動加入の決定は自らに対しても効力を持ち、自らにたいして適用される、つまり行動・選択の自由が制限されるということになる。
これを、「強制加入」ではないと言うのは強弁ではないだろうか。
もちろん、強制にも、「従わなければ殺す」といったものを頂点にいろいろな程度があるわけだが。

意思の確認を取らずに入会させておいて、「『強制』ではないです」は、通らないのではないか。
もしも、「強制ではないが、意思確認をせず加入させ、会費を徴収している」のだとするなら、今度は、詐欺罪の対象になってくるのではないだろうか。

「自動と強制は違う。うちが認めているのは自動加入で強制加入ではない。」と何度もおっしゃるので、「では、自動加入は強制加入と違うと言うなら、それぞれの定義をしてほしい」というと、「定義はできていない…。」と言うのだった・・。


<非入会の意思表示は認められるのか?>
「退会は阻止できない」(前エントリ⑧)と言うが、「非入会」の意思についはどうか?と聞くと、「入る意思のない人は入らなくていい。」と言う。

「あれ? 年度末の時点では、PTAで自動加入と決めたら、新入生の保護者もそれに従う必要があると言っていたではないですか。」と突っ込むと、
「あれ? そうでしたか? 私も今回のやりとりの中で人権について話を聞いたり、勉強したりして、以前とはひょっとしたら変わっているところもあるかもしれません。少なくとも、今の時点では、『入る必要なはい』と思います。」と。

つまり、「入る意思がないのに入らせられたら、それは違法」とは考えているようだ。

では、そもそも神奈川県教委が容認する「自動加入」って、何なのだろう?
「任意加入」との境界は??
と私も混乱してきた…。

ちなみに、過去のエントリを見てみたところ、今年の2月に次のような発言がなされているのだ。
少なくとも、以前に神奈川県教委が「強制的な加入」を容認していたことは間違いない(確か、上司のK氏からも同様の発言があった)。

**
なお、もうひとつ神奈川の担当者氏が持ち出してきたロジックが、
①PTAは任意に設立された独立した団体である。
②よって、団体内部で決められたことに、行政は口をはさめない。
③「自動加入」と団体内部で決められた場合、そのルールには一定の有効性が認められる。
というもの。

「もし問題があれば総会等で問題提起をすればいいのだ。」と。
総会で否決されたら?と問うと、「それはみんなで決めたことには従わないと…」と。

**拙記事<神奈川県教委からの再回答とそれへの反論>(2010.2.06)より


<「権利能力なき社団」がなぜ保護者の選択を縛る「権利」を持てるのか?>
「そちらの言っていることは、要するに、PTAは、保護者から特段の申し入れがないが切り、保護者の自由を拘束できるということだと思うが、そのようなことをする「権利」がなぜPTAにあるのか?」と問うと、
「入らないと言えば入らなくていい。やめたいと言えばやめられる。このようなものを『拘束』とまでは言えないのでは?」と。
有無を言わせず会員にするのだから、それは「拘束」でしょうと言うと、「有無を言わせず」という言い方に抵抗を示される。

「有無を言わせず」がきついなら、「意思の確認なく」ならどうかと言うと、それなら分かると。

で、改めて問うた。

**
会員でない者に対して、意思の確認なく会員にし、お金、時間、労力を相手方に提供させるといったことを行う「権利」をなぜPTAは持てるのか?
保護者はそのような「拘束」になぜ服させられなくてはいけないのか? そのような拘束に服させられる法的根拠はあるのか?

**

これに対しての答えはなかった。
「検討させてほしい。いずれ、返答します。」となった。


<公務員における憲法99条問題>
神奈川県教委は、「PTAは権利能力なき社団であり、それを直接的に規制する法律はなく、また憲法が直接的に適用されることもない。よって、社会通念がポイントになる。」と言う。
百歩譲って、PTAにそういう側面がないわけではないとして、では、PTAに深くかかわる校長や教委事務局の職員の責任はどうなるのだろう。

特に問題になると思われるのは、校長や教頭の責任である。
校長や教頭は、PTAの副会長や顧問として、PTAの意思決定、運営に深くかかわる責任ある立場にある。
そうであれば、PTAの振る舞いに憲法で保障されている国民の自由権に対する侵害が認められた場合、公務員に対して定められた「憲法尊重擁護の義務」(憲法99条)に抵触する可能性が大であると思うのだ。

日本国憲法99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。


この問題に関しては昨年度末にもすでに問い合わせているがどう思うか? むしろ校長の服務を監督する部署に問い合わせたほうがいいのか? 等聞くと、「PTAにかかわる問題であるので生涯学習課のマターでもある。その問いかけをどこで受けるのかも含めて、検討させてほしい」とのことになった。


<まとめ>
「『自動加入』は『強制加入』とは違う」(要するに「自動加入」には強制性が認められない(補足:11.19))と言うなら、「任意加入」との違いも明らかにする必要があるはずだ。
(近代社会であるならば)加入のあり方としては、強制と任意のどちらかしかないのではないだろうか。
それとは別に「自動加入」なる独自の加入のあり方があると言うのなら、

任意加入 ・ 強制加入 ・ 自動加入

のそれぞれについての位置づけをぜひ明確にしてほしいものだ。





1 ■入る必要はない
御疲れ様です。
神奈川にも見識と向学心を兼ね備えた公務員がいると判断でき、希望の光を感じながら御記事を読みました。
私は特に、
――人権について話を聞いたり、勉強したりして、…(中略)…今の時点では、『入る必要はない』と思います。――
というフットワークと自己認識を良好と評価します。たとえ年度が替わって「あれは当時の一職員の一時期における個人的見解に過ぎない」系の教委見解が公表されたとしても、けっこう長く輝く言辞なのではないでしょうか。個の向上は団の劣化を際立たせる、という意味で輝きがあると私は思います。


2 ■自動加入について
いつも拝見させていただいてます。

>自動的な加入も、規約等で「全員が入らなくてはならない」と決めて全保護者を強制的に加入させることも「法的に問題がない」。

まともな組織ならいわないと思いますし、驚きを隠せませんが、
先方のロジックについて考えてみました。

おそらく、こういうことでしょうか…

あるPTAが規約等で全員が入らなくてはならないと仮に決めて、
全保護者を強制的に加入させるとする方針とした場合、
それ自体は保護者側がそれを無視すれば済むことだから、
組織の方針としてはかなり不適切ではあるが、法的に問題があるわけではないと。
法的には入会したくなければ会費を払わなければよいし、
役職の要請も断ることが出来るのだから、
自動加入だといってもそれは組織が勝手なことをいってるだけだと…


こう考えると、
>あるPTAが自動加入と決めたのならその決定は非会員に対しても「効力」を持ち、全保護者に適用できる

と主張することは自由であるがその「効力」は法的効力ではないということになるのではないでしょうか。

従って、
>退会は阻止できない。
さらに、
>入る意思のない人は入らなくてよい。
としてその「効力


3 ■自動加入について
すいません。途切れました。

ーとしてその「効力」は当然そこまでは及ばないとするロジックでしょうか。

法的に問題があるとすれば、
「この組織は強制加入です」
と嘘をついたり、
「加入しなければ大変なことになりますよ」と脅かして加入させている場合です。

現実には、露骨にやると法的に問題がありますので、
保護者の無知や強迫観念を巧みに利用して加入に導いているのではないでしょうか。

余談ですが、消費者契約法についてのご指摘がありましたね。
本来PTAは入会時において、必要な説明をすべきだしその法律に服するべきだと思います。
しかし、それはまともな組織なら守ると思いますが、異常なPTAの場合、特にキツい罰則でもない限り実効性に乏しいかなと思います。

単に一保護者の入会契約が無効になり返金される程度であるならば、タカをくくって無視するつもりなんだと思います。
話を戻すと、PTAにおける

「任意加入」とは法的に入会が自由なこと。

「強制加入」とは法的に入会が定められていること。

「自動加入」とは法的な根拠はないが、PTAが全保護者を加入させるのに必要な一方的で独自な概念。

ではないかと思います。


4 ■Re:自動加入について
>すーちさん
横入りすみません。
解釈は正しいと思います。

しかし、学校側が抱き合わせ徴収などを行い、支払を以って入会とみなすのであれば、これは学校側による入会誘導(独禁法違反)若しくは消費者契約法における代理人としての入会勧誘行為と見做すことが出来るのではないのでしょうか。

任意団体における自動入会規程は”勝手にやってれば”ということで違法性はないものと思われますが、学校側が加担することで違法性があるものと考えますが如何でしょうか。

私は、保護者が異議を唱えない限り無効とならないことに学校側が加担する現状について、学校施設の使用を法的に許可する立場にある行政上の問題であり責任があるものと考えております。

5 ■無題

「 タテマエ 」 = 「 任意加入 」
「 実体 」 = 「 強制加入 」

「 タテマエ 」と「 実体 」、
二つの規範(二重規範)を一度に表現すると
「 自動加入 」という言葉になるのかも…、です。

6 ■自動加入について
>PTAのあり方とは・・さん

学校による他の教材費と一括してPTA会費を口座振替により徴収する方法ですね。

私は非常にこのやり方は問題あると思います。

まず、学校という公共組織が一私的組織の徴収依頼を受けることができるのかという点です。

次に代理徴収自体が可能だとしても、
口座振替の中にPTA会費が含まれていることが明示されているのかどうか、
さらにそもそも適切な入会手続き(入会の意思表示)を経ているものかどうか、
学校は確認するべきだと思います。

もしそうでなければ、PTAと学校が共同で泥棒を働いているのと同じですね。
さて、独占禁止法の観点からも考察されてますが、
学校が代理徴収することが入会誘導にあたる可能性は理解できますが、
独占禁止法上の趣旨における入会誘導にあたるかどうかまでは理解ができませんでした。

また、独占禁止法が適用された場合、その効果はどのようになるのでしょうか?

7 ■コメント、ありがとうございます。
FJNさん>
>個の向上は団の劣化を際立たせる、という意味で輝きがあると私は思います。

心に沁み入ることば、ありがとうございます。

すーちさん>
はじめまして。
法律にお詳しそうですね。
今後とも何かとお知恵をお貸しくださいませ。
「自動加入」についてのコメント、今後の考察、そして神奈川県教委との交渉の参考にさせていただきます。
私の現時点での「自動加入」についての直感的定義は、タテマエとしては任意であるが実態としては限りなく強制に近い、【ぶっちゃけ強制加入】というものです。(里山さんの指摘と同じですね)
この定義、実態と見事にリンクしていますでしょ(笑)

あり方さん>
おっしゃる通り、学校の関与は、この問題を考える上で外せないポイントですね。
なんの説明もなく、いきなり校長名で給食費と抱き合わせに支払いを求められたら、「PTA会費って、給食費と同等の支払い義務のあるものなのだ」と思うのがふつうだと思います。
学校の行為として(も)、極めて不適切ですね。
(拙記事<告知なしの校長による給食費等との抱き合わせ徴収につき横浜と川崎の教委に申し入れ>http://ameblo.jp/maruo-jp/entry-10491294728.html参照)
憲法99条を前面に出すことについて何かお考え(賛成・反対・留保等)がありましたら、ご教示くださいませんか?

里山さん>
鋭いと思います。
保護者の「無知」と親心につけ込むこのやり方は、本当に許しがたいと思います。

8 ■Re:自動加入について
>すーちさん
ご応答ありがとうございます。
抱き合わせ徴収の問題点について同意頂き、心強く思っております。

学校による任意団体経費の徴収につきましては、自治労学校事務組合等で「公務外ではないか」との指摘もあるようです。

代理徴収の際の”確認すべき事”についても激しく同意いたします。

独禁法についましては、かの和田中の「土スペ」に関する住民監査請求で”欺瞞的顧客誘引”に相当するのではないかという指摘がありました。
PTAには連合体経費負担や保険事業(現在は殆どが損保会社へ委託)がありますので、やはり欺瞞的顧客誘引に相当するものと考えております。
又、動員や人的金銭的学校援助という事実があります(教材費や図書費負担は全国的な問題だと思われます。)ので”優越的地位の濫用”のも相当するのではないかと思ってもおります。

私は、学校側の説明責任について「消費者契約法の代理人」として存在すると主張しておりますが、もし、独禁法が適用されるのであれば、学校側による「PTAの任意性」についての説明責任がより明快になるものと考えております。


9 ■Re:コメント、ありがとうございます。
>まるお(加藤薫)さん
先ほど2重で投稿してしまいました。すみません。
私もすーちさんは法律に詳しいと感じましたので、つい、横入りしてしまいました。
コメントを頂いて感激しております。

交渉の中で憲法を持ち出すことについて、大変に有効だと思います。

私はより具体的な「職務専念義務」や「公務員の職権濫用(刑法)」の疑いを指摘しておりますが、これでは強すぎるようです。(笑)


10 ■まるおさん
これが書かれてからもう2年以上経っているのですね。

私は、教委や学校に入会辞退を申し出るべく電話しましたら、両者ともに「任意」と仰る。

けれど、実態は自動的に加入。私の言葉でいいましたら、強制です。
「強制ですね?」と尋ねたら「任意です」とはっきり仰る。

私は混乱しております。
教委は「自主自立の民主的団体」に指導はできないと。
では、学校に指導は?と疑問が次々溢れ出ます。

入会辞退をしたいだけですから、届けをPTAに提出し、後は知らぬ存ぜぬでもいいのかしらとも思いつつ。

11 ■「非入会・退会」の意思表示を認めないのは論外
>ぽぽさん
拙記事に記しておきましたように、「自動加入」を違法ではないと回答してきた神奈川県教委(でさえ)も、「入りたくない・退会したい」との意思表示を認めないことは違法であると明確に認めています。

また、最近のビッグニュースだと思うのですが、大津市の湖岸の銀さん情報によると、「自動加入」について、法務省人権擁護局(大津地方法務局)が「人権問題に該当する」としていますね。
http://parsave2013k.blogspot.jp/2013/02/440-25220-25-25-2524253.html

http://parsave2013k.blogspot.jp/2013/02/blog-post_16.html

すでにご存知のことかもしれませんが、参考になさってください。


さはさりながら、なにぶん、お子さんの学校生活に関わることなので、無理のない範囲で、慎重にことを進めてください。

12 ■Re:「非入会・退会」の意思表示を認めないのは論外
>まるおさん

ありがとうございます。

>お子さんの学校生活に関わることなので、無理のない範囲で、慎重にことを進めてください。

学校生活にどの程度PTAが絡んでいるのか、入学前では計り知れず。これは学校によっても様々のようですね。
私が二の足を踏んでいる要因です。