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2011-01-08 11:55:26

「PTAの『自動加入』は違法ではない」とする「回答書」(by神奈川県教委)の問題点(その1)

テーマ:PTA
<人権侵害をめぐり>
神奈川県教委事務局(生涯学習課)は、「自動加入」のPTAを、「規約に『自動加入』と定めた場合」と「規約に加入方法を定めていない場合」に小分類し、そのいずれも人権侵害(民法第90条公序良俗違反)には当たらないとする。
※なお、「自動加入」が「任意加入」や「強制加入」とはどう違うのかの定義は示されていない。現在、定義をするよう神奈川県教委に要請中。

「回答書」の全文は、こちらです。


<「規約に『自動加入』と定めた場合」の問題点>
まず、「規約に『自動加入』と定めた場合」から検討する。神奈川県教委事務局が「人権上違法性なし」とする根拠は、以下の二点である。

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① 平成21年度文部科学省委託事業である「PTAを活性化するための調査報告書」(平成22年3月)から、現時点では、6割以上の人がPTAは必要であると考えており、子どもの通う学校のPTAに参加することは、多くの親の意思と考えられる。
② 脱退については、任意の退会を認めない旨を定めることはできず、会員はいつでもPTAに対する一方的な意思表示で脱退できるので、意に反して会員でなければならないという事態は容易に解消できる。
(引用に際し、番号を付した)
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まず①の主張であるが、データを見ると、役員経験者に限れば6割以上の保護者が必要と答えているが、役員未経験者になると「54%」と、必要と答える人がやっと過半を超える程度になっている。つまり、役員未経験の保護者のほぼ半数は、「PTAは必要な組織である」とは答えていないのである。

さて、神奈川県教委は「子どもの通う学校のPTAに参加することは、多くの親の意思と考えられる。」とする。なるほど、「過半の保護者はPTAへの参加の意思がある」とする判断には一定の根拠があるとは言えよう。しかし、そのいっぽうで言えることは、「半数近くの保護者はPTAを必要だとは答えていない」という点だ。さらに言えば、その組織を必要とすることと、その組織に加入することとは本来別のことなので、その点も加味して考える必要がある。

そのように考えると、「子どもの通う学校のPTAに参加することは、『全て』の親の意思である」とは到底言えない、ということになる。そして、PTAに加入することが『全て』の親の意思とは言えということになると、人権(自由権)尊重の観点から、同意を得ることなく全ての保護者をPTAに加入させる「自動加入」の問題性が浮かび上がってくる。
※なお、神奈川県教委は、今回の文書化以前には、「子どもの通う学校のPTAに参加することは、親の意思と考えられる。」としており、「多くの」とは言っていなかった。


問題は、多数決で決められることなどではなく、保護者一人一人の「思想・良心の自由」(憲法第19条)、「個人として尊重される」権利(憲法第13条)、「結社(非結社)の自由」(憲法第21条)が侵されていないかどうかである。

「説明をし同意を得る」というプロセスを飛ばして、つまり「有無を言わせず」会員にし、会費を徴収する。(そして、会員の義務として、役職を強要する。)
この個人の自由に対する「拘束」を、「半数程度の保護者がPTAは必要だと答えている」というデータが正当化できるとは到底思えない。

次に② の主張についてだが、脱退の自由を正式に認めたことは当然のこととはいえ評価できる。しかし、「脱退を認める」ことが、「説明と同意抜きに全員を加入させる」ことを正当化することはできない。
なぜなら、一時的にせよ、個人の自由をその同意なしに「拘束」する(会員にさせ、会費を徴収する)のだから。
また、「意に反して会員でなければならないという事態は容易に解消できる」との主張もPTAの実態に即したものとなっているのか大いに疑問である。


<「規約に加入方法を定めていない場合」の問題点>
神奈川県教委事務局が「規約に加入方法を定めていない場合」も人権侵害(民法90条公序良俗違反)には当たらないとする根拠は以下の通り。

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PTAの規約に加入方法についての定めがなく、事実上、自動加入が慣習として行われている場合でも、保護者が明らかに加入しないとの意思表示をしていない場合は、慣習に従う意思を有するものと推定される。当該慣習は、上記と同様、公序良俗に当たらないと考えられる。したがって、慣習として自動加入が行われていても、違法ではない。
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主張のポイントは、「保護者が明らかに加入しないとの意思表示をしていない場合は、慣習に従う意思を有するものと推定される。」というところだ。

この主張は、「自動加入」というあり方そのものが多くの保護者に「PTAへの参加は義務的なものなのだ」と誤認させる側面を持っているという問題点を無視した主張だと思う。

(神奈川県教委自身が今回依拠する)文部科学省の委託調査を見てみても、役員経験者においてすら「説明はなかったが、入退会は自由であることを知っている」と答えは者は、わずかに「25%」なのである。
ちなみに、その他の回答は、「入退会は任意で自由であることの説明があった」17%、「説明はなく、入退会が自由かどうかは知らない」50パーセント、未回答8%。
この調査によれば、「PTAの入退会が任意であることを知っている」保護者は、役員経験者においてすら、42パーセントと、半数以上の保護者が入退会が任意である事実を知らされていないことが分かるのである。

PTAへの加入は義務的なものだと誤認させるような体制を維持してきたなかで、「慣習に従う意思を有するものと推定される」とは、あんまりではないだろうか。


以上、「自動加入」には人権上の違法性は認められない、とする神奈川県教委事務局の主張には、特に憲法に定められた国民の自由権をないがしろにしている点で大きな問題が認められるのではないか、ということを述べた。





1 ■お試し期間
学校に入学していきなり内容もよくわからず全員が会員です。役員をするのが義務です。児童入会は違法ではありませんと言われても、困ります

ある程度どの役員にはどのような仕事が振られるなど情報のある方はいいと思いますが、何の情報もないのに
はい、次は○○役員を立候補される方
と言われても、それはなんですか?と思ってしまいます

せめて入学=自動入会ではなく
新一年生や転校生は1年間会費無料のお試し期間を作って欲しいです
実際にどんな活動があり、どんな役員がどのような仕事をするのかと書面だけではわからないので、一年間実感してから入会するか否かを決めたいんです

法律には 詳しくありませんが、いきなり入会と会費の強制を違法ではないといわれても、法律に基づけばおかしな契約だと思います

学校を選べればいいのですが、学区自由ではないし、あなたの子供はこの学校へ行きなさいと言われどういう学校かなのかもわからずとりあえず通わせているのに、あげく、自動入会は違法ではないなんて法律の使い方を間違えているんじゃないかと思ってしまいます

2 ■Re:お試し期間
>神奈川県民さん
ご苦労、お察し申し上げます。

拙ブログで紹介していますように、「自動入会」を是とする神奈川県教委も、退会を認めないのは人権侵害であると認めています。
http://ameblo.jp/maruo-jp/entry-10757748165.html

ですから、一年後に退会することは十分に可能です。

とは言え、「自動加入体制」のもとでの、非入会や退会は、あくまでも「例外」扱いされているようなところが、すっきりしませんよね…。

PTAは、法律的に「任意に構成される一社会教育関連団体」なのですから、保護者一人ひとりが白紙の状態で、それへの加入・非加入を決められなくてはおかしいです。

その意味で、
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学校を選べればいいのですが、学区自由ではないし、あなたの子供はこの学校へ行きなさいと言われどういう学校かなのかもわからずとりあえず通わせているのに、あげく、自動入会は違法ではないなんて法律の使い方を間違えているんじゃないかと思ってしまいます
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との御発言は、まったくその通りだと思います。

神奈川県、いや全国のPTAに関わる教育行政関係者によ~く読んでほしいと思います。