<221> #11

2012-07-07 00:25:11

拙コメント「学校が寄付を募ることもあっていい」をめぐって -抱き合わせ徴収はやはり問題だ!-

テーマ:PTA問題の実際的解決をめざして

<コメントの意図>
朝日新聞に掲載されたコメント中の「学校が寄付を募ることもあっていい」の部分に対して、拙ブログ読者の方から疑問が寄せられました。
そのコメントがどのような文脈の中でなされたのかについては、前エントリ中の④の部分をご参照いただければ幸いです。

さて、寄せられた疑問は、一言で言えば、「学校がそんなことしていいの?」というものです。

私も、やるべきだと言っているわけでも、積極的に勧めているわけでもありません。
財政事情の厳しき折、予算はどう頑張ってもつかないが、学校として児童・生徒のために必要だと判断されると言うのなら、「学校の運営主体としてご自分たちで工面の努力をするしかないのではないですか?」と言いたかったのです。

もちろん、施設の建設事業費、建物の維持・修繕に要する経費、職員の給与に要する経費など、地方財政法等で禁じられているものはいけませんが、それ以外については、寄付を募ってはいけないとする法令も、文科省からの通達もないはずです。


<文科省担当課へ確認>
とは言え、見落としている条文や教育界における常識があるのかもしれないと思い、文科省担当部署に問い合わせてみました。
先ごろ出された「PTA会費に関する通知」(平成24年5月9日)を担当した初等中等教育局教育企画課教育公務員係です。
※通知の正式名称は、「学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び学校における会計処理の適正化についての留意事項について(通知)」

担当官によると、学校が寄付を募ってはならないとする法令や通知・通達はないという理解で間違いないようでした。
ただし、次の二点には注意する必要があるだろうということです。

① (大原則は公費負担)
公費負担の大原則があることを踏まえ、極力公費で賄うよう努めること。

② (強制との誤解を与えぬように)
学校が寄付を募ると、学校にそのような意図がなくても払わないといけないとの誤解を保護者に対して与えやすい。誤解のないような説明と手続きが必要だ。


私はこれを聞いて、自分のコメントがそれほどおかしなものではなかったとホッとしました。


<改めて見えてきた「抱き合わせ徴収」の不適切性>
しかし、それと同時に、我々がこれまで散々問題にしてきたPTA会費の給食費などとの抱き合わせ徴収の問題性が改めて浮上してきたのでした。

抱き合わせ徴収の典型的なあり方は、

PTA会費の支払いを、

・校長名で、
・その支払いが義務である給食費といっしょくたにして、
・全保護者に対して

要請する、というもの。


② の指摘を前提にすれば、給食費との抱き合わせ徴収がなぜこれまでまかり通ってきたのか不思議で仕方がありません。
なぜなら、それは、保護者に対してPTA会費の支払いは義務との誤解を非常に与えやすいシステムだからです。

PTA会費のほうはもちろん全額が学校に寄付されるわけではないのでそこは違いますが、重なる部分があることも確かです。
教育公務員係の担当者の説明を聞き、PTA会費を学校長が給食費と抱き合わせに徴収することの問題性を改めて確信したのでした。


<抱き合わせ徴収に対する文科省担当課のスタンス>
しかしながら、担当者氏にその認識を率直にぶつけたところ、「PTAというのは、まあ古くて新しい問題でして…。」と、PTA会費徴収のあり方の問題については明確な回答はありませんでした。

「校長がPTAの任意性に言及することなく、給食費と抱き合わせにPTA会費の支払いを保護者に求めるというのは、校長の問題行為であり、まさに『教育公務員係』のマターではないのですか?」と問うと、「まあ、全国にはいろいろな学校があるのかもしれませんが…」と。

それに対し私は、「いやいや。給食費との抱き合わせ徴収は全国的に認められる問題です。横浜市でも約500校ある小学校、中学校の多くで、行われてきました。」と申し上げました。

続けて、「もっとも、横浜市教委は、昨年度から大きく舵を切り、PTAが任意加入の団体であることを保護者に周知するようになったし、PTA会費の徴収方法については今年度より、教職員向けの手引きの中に『PTA会費はPTA会員から徴収するもの』との位置づけが示されるようになり、現に茅ヶ崎東小のように学納金に関する保護者宛ての文書の中で、PTA会費を支払うのは『会員のみ』であると明記する学校も現れています。この動きは横浜市の中でも始まったばかりですが、このような適正化の動きが全国に広がるとよいと思っているのです。」とお話ししました。

残念ながら、はっきりとしたリアクションはありませんでしたが、この点については、「PTA会費に関する通知」(平成24年5月9日)やそれに伴う調査の結果等を参照しつつ、引き続き考えていきたいと思っています。


それにしましても…、

いわば「直接保護者に負担を求めれば非難ごうごうになる(少なくとも議論の対象になる)ものを、黙ってPTA会費から流してるから文句も出ずスムーズに流用できている」というシステムの不正さを指摘することが目的の記事だと受け止めました。
(拙エントリ「和歌山のPTA会費流用問題をめぐり朝日新聞にコメント」中のコメント8)

という、ぶきゃこさんのコメントは我が意を得たりの鋭い指摘で、とても参考になりました。<(_ _)>





1 ■現実には無理
まず議論を、小中学校と高校に分けましょう。
高校は義務教育では無いので、やり方によっては可能です。法律違反かどうかは別にして、公立小学校で寄付金はあり得ないんですよ。一度、無作為に何処かの学校で取材してみたらどうですか?学校に申し出たら、『自治体にお願いします」と言われるはずです。

学校が部活動に関わる経費を、保護者から寄付として募るとしたら、その結果どういう事態になるか普通は想定します。
もし、暴力団関係の保護者から10万円の寄付金の申し出が学校にあったら、どうしたらいいですか?現在の世相で、このお金がうけとれますか?義務教育では、学校も保護者も相手を選べないんですよ。こんなリスキーな金策を真顔でさせるのかと、あきれます。PTAに援助を依頼する方がよほど理性的だと思いますが、読者の皆さんいかがでしょうか?


2 ■Re:現実には無理
>経験者さん
出資者や出資額が適正でないと判断したら学校が断ればいいんじゃないですか?
現に今そうしてるでしょうし。
どうして「募った以上絶対に受け取らなきゃならない」という前提になってるのでしょう?
保護者の集団(暴力団員が含まれる)に対して「部費を負担して」と願い出ることがリスキーなんであれば、給食費の集金だってリスキーだし、そもそも暴力団員の子を就学させることがもはやリスキーでしょう。

「PTAに援助を依頼する方が理性的」とおっしゃいますが、現在の全員加入体制では暴力団員の親も、ほぼ全員会員でしょ? それこそ会長かもしれませんよねー。
そんな団体に「お金出してよ」と依頼することの方が、金額大きいだけに怖いですが。
だからこそ、寄付の受領はきちんと手続きしなきゃいけないんじゃないですかね。
PTAは、善意で理性的な親の代表ですか?

***ちょっと余談***
寄付受領の手続きには私は全く暗いんですが、おそらくなんですけれども、「この寄付金を受け取ることにより自治体等が寄付をしたあなたに特別利益を供与したりあなたの指示に特に従ったりすることはないことを互いに確認する」みたいな、簡易示談というか約定がなされてるんじゃないかと推測しますが…
そうじゃなかったら裁判沙汰になった時に収賄でない立証が面倒くさくなりますし。
もし、お詳しい方いらっしゃったら教えてください。
***余談終わり***

そもそもPTAは便利屋じゃなく、学校のお助け集団でもなく、きちんと法律で定められたミッションがあるわけなんですけれどもそこは経験者さんは無視でしょうか?

3 ■Re:Re:現実には無理(まるお)
>経験者さん
「現実には無理」とか「あり得ない」というのは、何を根拠におっしゃるのでしょうか?

前々エントリでの御レスを再掲します。
***
4 ■Re:灰とダイヤ
>姫路さん
>例えば、学校の部活動費を上げるべきだと判断したら実情を説明した上で、県教委と掛け合ったり、保護者に呼びかけて寄付金を募ったりしてもいい。

残念ながらこのコメントはダイヤじゃないし、誤解を招きかねない。
いまどき、義務教育の公立学校で保護者に寄付を求めるなんて許されないことです。そんなこと認めてる自治体なんてどこにあるのですか?少なくとも私の住んでる政令市では、公立学校が保護者に寄付を求めることは、いかなる場合も認められていません。
こんな初歩的なチェックもできないで、新聞に載せる朝日も勉強足りないなー。
***

まず、朝日の記事は【高校のPTA】を問題にしたものであることを踏まえてご発言ください。
(もっとも、私は義務教育においても当てはまることと理解していますが。)

さて、学校が寄付を募ることを「認めていない」、「許していない」教委は、どこにありますか?
あなたが関係した学校を所管する教委は、本当に認めていませんか?

私も、現状において、寄付を募っている学校がなさそうだ(特に義務教育において)とは思っていますが、そこから、「認められていないのだ」と断じることは論理の飛躍だと思います。

学校・教委にとって、PTAからとる方が楽だからそうして来ただけではないのでしょうか?

4 ■Re:Re:Re:現実には無理
文科省が、助け舟を出してくれて、助かったと思ってませんか?
でもね、現場の教育関係者は失笑していますよ。確か猫紫紺さんも、主語が学校だったら大問題だと言ってましたよね。
あなたは、私に指摘されて慌てて文科省に聞いたんですよね?それでは、朝日に『学校が寄付を求めれば良い」と書かせた根拠はどこからきたのですか?先ずはそれを示してもらえませんか?あなたの体験ですか?何処かの学校への取材ですか?

私は自分の経験に基づいたことしか書いていません。私が会長をしていた学校の校長が『現在の学校は、保護者から寄付を受け取れない」といっていましたし、実際一度も寄付なんて見たことが無いんですよ。

政令市の公立小学校で、寄付を直接保護者から受け取る学校があるというなら、ここにコメントを書いてる方のお子さんが通ってる学校に寄付金が出来るのか聞いてみてください。それで真実がわかります。

私はこれ以上、あなたを裸の王様にしたくないので、これくらいにしときましょう。
もし、どうしても白黒つけたければ、朝日新聞に文科省ではなく学校に直接取材に行ってもらえれば、事実がわかるはずです。

5 ■経験者さんへ (まるお)
>あなたの体験ですか?何処かの学校への取材ですか?

体験や取材の結果ではありません。
「問題のある現状」を乗り越えるための、法令を踏まえてのアイディアのつもりです。
(ただ、高校生の時に野球部が甲子園に出た時、寄付を求められた体験はありますが。)

>私が会長をしていた学校の校長が『現在の学校は、保護者から寄付を受け取れない」といっていましたし、実際一度も寄付なんて見たことが無いんですよ。

校長先生の裁量で寄付を受けないこともできるとは思いますが、「現在の学校では認められていない」という話にはなりません。

経験者さんは、「現状」と「あるべき姿」をごちゃごちゃにしてしまっているように思います。
私の述べているのは、「現状」ではなく、「今後のあるべき姿」のつもりなので、そこをご理解いただければと思います。

6 ■イギリスの小学校で
息子がスコットランドの現地校(公立)に通っていました。その時には折につけ寄付金を集める機会がありました。そもそもPTA会費自体が「○○ポンド以上いくらでも」というアバウトな集め方。それ以外に子どもたちのパーティーを先生方中心に企画をしてチケットを販売する形、(親はボランティアでケーキやクッキーを作って持って行きます)、Bouncing Castleっていったかな、空気を入れた大型遊具で子どもたちが何回飛べるかを記録して、その回数×任意の金額を寄付金として集めるようなこともやります。そして1年間集まったお金を学校に寄付するんです。そのお金はストレートにパソコンになったり、教具になったりしていました。シンプルで気持ちがいいやり方で不満もありませんでした。公立だから出来ない、ということはないという一つの例としてご参考までに。


7 ■会費集め過ぎ
そもそも、そんなに流用できるほどのPTA会費を集めている&貯め込んでいるって、ヘンですよね。最初から、流用することを見込んで集めている(集めさせている?)のでしょうか。


8 ■無題
寄付受けをしないで裏金で学校運営に使用するのが、誤りだと思います。

文科省、学校支援地域本部事業の資料を見ていただくと判ると思います。文科省は、地域からの寄付を当てにしてます。

そこで、この様な考えはどうでしょうか?
1 私費会計の廃止。
  公費会計で透明性の向上
2 原則的に寄付受けする。
  地域格差を明らかにする。
3 交付金についても教育用は、使用の限定。
  教育用とし他の予算への転用防止をはかる。
4 寄付金に応じて、交付金の再配分。
  半期毎集計・報告をし、交付金の一部を国庫返納再配分を行い、地域格差の是正に努める。

教育行政のシステムも修正する必要があると思います。


9 ■Re:Re:Re:Re:現実には無理
>経験者さん
>確か猫紫紺さんも、主語が学校だったら大問題だと言ってましたよね。

わたし、確かにそう書きましたけど、あなた様の肩を一方的にもつつもりはありませんので、あしからずご了承ください。「ことのは」の都合のいい部分だけを採用しないでください。
新聞記者の主語問題につきましては、まるおさん、こちらのエントリで明らかにしていらっしゃいます。
http://ameblo.jp/maruo-jp/entry-11295597733.html#main

あと、自校では、学校長が、PTAおよび周年行事実行委員会に対し、物品のリクエストを平気でなさる方なのです。この耳で聴いたのは1件。それは理と緊急性を認め、PTAで承認。
伝聞では3件以上。
熱意ある方だけに、PTA問題の点に理解が乏しいところがもどかしい。

おっと愚痴になってしまいました。
閑話休題。
枝葉ではなく、本質を見ていきましょう。

通りすがりの匿名希望さんご提案の、1~4ですが、これは、ステップを踏んで地域格差の是正に努める、という理解でよろしいでしょうか。


10 ■無題
猫紫紺さんへ
 その通りです。
 あわせて、学校運営のシステムも変更する必要があると思います。





11 ■Re:無題
>通りすがりの匿名希望さん
問いにお答えいただき、感謝申し上げます。

教育行政・学校運営の現システムは、戦前の軍国教育の反省から、教育の権力を分散するためにできた、と聞き及んでおります。制度設計者はわかりませんが、GHQあたりかも??
ですが、歪がでていますもの。

ご指摘のシステム変更について、ヒントになる情報があります。
数年前の大分県教員採用汚職事件のテレビ報道で出たテロップのメモが手元にあります。

 ・教育委員会の予算を独立させ、議員の影響を払拭
 ・ガラス張り
 ・外からの人材を入れよ
 ・集中した人事権を分散すべき

どこがどうつながってくるか、というのは、個人的にはまだまだ不勉強でございますが…
「ガラス張り」というのが、一番わかりやすいですし、「真実を情報発信」「悪い物事ほど早く」する、というのが広報の基本だそうです。