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2012-07-30 00:10:25

「附属学校の運営に要する経費等の取扱いについて」 ― “会費からなされる寄付は受けてはいけない”

テーマ:PTA問題の実際的解決をめざして
PTA会費の流用問題については、実は今から12年前にも、国立大学の附属学校で問題になっていたようだ。

「附属学校の運営に要する経費等の取扱いについて」(平成12年3月8日)という通知が文部省高等教育局長名で「附属学校を置く各国立大学長」に対して出されているのだ。
(ブログ「大学サラリーマン日記」によりその存在を知りました。)

その前書きには、次のように、通知を出すに至った背景が述べられている。

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 附属学校の運営に要する経費について、一部の附属学校で、附属学校に在籍する幼児、児童、生徒の保護者(以下、「保護者」という。)に負担を求めることが適当でない経費についてまで保護者に依存している例が見受けられます。ついては貴管下の附属学校において、今後このようなことが生じないよう十分ご留意願います。
 
 なお、附属学校の教育の振興・充実等を目的とする寄附者の自発意志による寄附については、これを受け入れることは差し支えありませんが、その場合は、下記のとおり、適切な取扱いがなされるようにお願いします。
(以下、省略)
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前書きに続き、以下の内容が記されている。

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1 当該学校のPTA(名称の如何を問わず、保護者と教職員が構成員となっているものをいう。)は国の職員(附属学校の教官)が構成員となっているため、形式の如何を問わず、当該学校への金員や物品の提供等(以下「寄附」という。)を目的とする会費の徴収や募金活動をすることは適当でないこと。

2 当該学校の後援会等(名称の如何を問わず、当該学校の教育研究の振興等を会の目的として保護者が主たる構成員となっているものをいう。)から寄附を受ける場合には、次の事項に留意し、疑義がある場合は寄附を受けないこと。
①募金活動は、後援会等当該団体の活動に必要な会費の徴収とは別に行われること。
②寄付はあくまでも寄付者の自発的意志によるもので、寄附金額についても割当の方法によらない任意の額となっていること。
③募集要項等において、その目的、趣旨及び寄附自体の任意性、寄附金額の任意性が明確になっていること。
④ 募金の趣旨が、附属学校等の教育の振興・充実等を目的とするものであること。
⑤ 募金活動、その他経理全般について、法人の職員は一切関与しないこと。
⑥ 大学は奨学寄付金として受け入れ、委任経理事務の基準に従って適正に処理すること。また、物品を受け入れる場合にも、所定の寄附手続きによること。
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PTAからの寄付を禁じている点も興味深いが、この点はPTAとは別に後援会をもつという附属学校の特異性と関係するので、今回は問題にしない。


<公立学校においても守られるべきポイント>

2-②で、寄付をするか否か、寄付をするとしてその金額は「あくまでも寄付者の自発的意志によるもの」でなくてはならないと、寄付の任意性が担保される必要があることが述べられている。

2-③では、募集要項等において、寄付自体の任意性、そして寄付金額の任意性が保護者に明確に伝えられなければないないとされている。

そして、2-①では、寄付自体の任意性、寄付金額の任意性を担保するためだと思われるのだが、学校への寄付に回されるお金は、会費とは別に集められなければならないとしている。

これは考えてみれば当然のことで、会費から寄付金に回された場合、寄付自体の任意性も、寄付金額の任意性も担保されなくなってしまう。その点を考慮した指針だと思われる。


さて、”寄附はあくまでも寄附者の自発意志によるもので、寄附自体の任意性、寄附金額の任意性が担保されなくてはならない。”とは、まことにもっともな指摘ではないだろうか。
こういう通知がすでに12年前に文部省から出ているのだ。

では、今の公立学校においてはどうか?
現在、多くの公立学校においては、PTA会費から学校への寄付がなされているので、保護者一人ひとりの任意性は担保されているとはとても言い難い。


今年に入り、沖縄や和歌山の公立高校におけるPTA会費の使い方が問題になり、5月に文科省初等中等教育局が通知を発出し、調査を行うことになった。
(「学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び学校における会計処理の適正化についての留意事項について(通知)」平成22年5月9日)

しかしながら、その通知とそれに伴う調査の文言を見る限り、残念なことに、保護者一人ひとりの任意性を担保しようとする姿勢は認められない。

私の「読み」が誤読ではなければ、今年文科省から出された学校への寄付をめぐる通知は、12年前の通知より大きく後退している。
12年前の通知では大切にされていた保護者個々人の自由意思が、今回の通知ではないがしろにされてしまっているように思われるのだ。
これは大きな問題ではないだろうか。


今年出された文科省からの通知の文言については、次のエントリで紹介したいと思います。